先日、認知症のリスクが早ければ幼少期からわかる可能性があると発表されました。
看護師として働いていると、認知症の患者さんにはよく出会いますよね。
かわいらしいといったら失礼かもしれませんが、認知症を発症しても表情がおだやかに過ごされる方もいらっしゃれば、徘徊や妄想といった目を離せない方もいらっしゃいます。
あなたは目の前の認知症患者さんをみて、何を思うでしょう。
「とにかく安全だけは守らなければ」
「認知症だからこうなっている」
「認知症だから仕方ない」
「自分や家族もいずれこんな風になるのだろうか」
「認知症を避ける方法はないのだろうか」
さて、今回は新たに発表された研究結果とアルツハイマー病についてのお話です。
認知症とは?のおさらい
本題に入る前に認知症についておさらいしておきましょう。
診療情報にただ「認知症」と書かれている場合も多いのですが、認知症には種類があります。
脳が委縮するアルツハイマー型認知症、脳梗塞後など脳血管障害のあとに発症する脳血管性認知症、レビー小体タンパク質が蓄積されることで発症するレビー小体型認知症、前頭や側頭葉が委縮する前頭側頭葉変性症、そしてパーキンソン病です。
また、単体ではなく複合しているケースもあり、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が合併していたり、パーキンソン病とレビー小体型認知症の合併、もしくはそうでない場合など様々です。
代表的な特徴を下にまとめます。
○アルツハイマー型認知症:女性に多い、物忘れ、病識がないことが多い、重度になってくると徘徊や妄想が多い
○脳血管性認知症:男性に多い、病識を認知していることが多い、反応が遅い、知能低下、言語障害の併発、転倒しやすい
○レビー小体型認知症:パーキンソン様症状、幻視
○前頭側頭葉変性症:落ち着きがなくなる、清潔感がなくなる、同じ言葉や行動を繰り返す
○パーキンソン病:動作緩慢や小刻み歩行などの動き
一口に認知症といっても、このような種類があります。細かくいうと、重症度や個人差などもありますから、典型的なパターンに当てはまらない人もいらっしゃいます。
しかし、同じ認知症でも、細かく紐解いていくと傾向がみえてくることも。
幼少期からわかる!?アルツハイマー
さて、このような認知症の中でも多いのがアルツハイマー型認知症。
しかし、このアルツハイマー型認知症、最近の研究で早ければ幼少期ころから認識力などに影響を与える可能性があると発表されました。
Neurologyに掲載されたこの研究では、アポリポタンパクE(ApoE)という遺伝子に着目。
このアポリポタンパクE(ApoE)には、ε2、ε3、ε4という対立遺伝子があり、ε2やε3をもつ人々よりε4をもつ人は、より高い頻度でアルツハイマー病を発症します。
これが早ければ幼少期からわかるかもしれないというのです。
ハワイ大学のリンダ・チャン教授は、この研究を行うことでこどものころから認知症のリスクを知ることができ、発症を防ぐ手立てにもなるかもしれないと言っています。
しかし、このような遺伝子検査はかなり特殊ですし、今はまだ研究段階なので一般には受けることが難しい検査です。
「でも、私、アルツハイマーの可能性があるか知りたい!」という方は、脳内の「アミロイドβ」という物質の蓄積を調べることで、その可能性を知ることができます。
厳密には、アミロイドβが蓄積されていなければ、アルツハイマーになる可能性はほぼないと言えます。
反対に、アミロイドβが蓄積されている場合、アルツハイマーになる可能性がありますが、アミロイドβが蓄積されていてもアルツハイマーにならないケースもあります。
あくまで可能性がわかる検査ということですね。
どうやって防ぐの?アルツハイマー
しかし、こどものころからアルツハイマーの可能性がわかったところで、アミロイドβが蓄積されていることがわかったところで、アルツハイマーを防ぐ手立てがなければ意味がありませんよね。
実はアルツハイマーの進行を遅らせる薬の研究は進められていますが、まだ実用段階ではありません。現在使われているアルツハイマーの薬は、アルツハイマーそのものの進行を遅らせるというものではない上に、個人差もある一時的なものです。このような研究が進めば、将来認知症がぐっと減ってくるかもしれませんよね。
また、アルツハイマーの原因は明らかになってきており次のものがあげられます。
アルツハイマーの原因
・遺伝
・加齢
・運動不足
・糖尿病
・肥満
遺伝は上で述べたように、アポリポタンパクEの対遺伝子ε4を持っている場合。
加齢は年齢とともに脳が少なからず委縮してしまうという意味です。
そして、大切なのは血糖値!なんと血糖値を下げるためのインスリンが、アミロイドβの蓄積と関係しています。
通常、このアミロイドβという老廃物は蓄積される前に酵素によって分解されます。しかし、インスリンが酵素の働きを阻害することで、アミロイドβが分解されずに脳に蓄積されてしまうのです。
そのため、運動不足、糖尿病、肥満によってインスリンが多く分泌されてしまうような人はアミロイドβが蓄積されてしまいます。
遺伝・加齢はどうしようもできません。
しかし、運動不足、肥満、糖尿病は自分で予防することが可能ですよね。
過度な運動は良くないのですが、週に3~5回、1回20分から60分程度の適度な運動はかなり有効です。
実際、既にアルツハイマーを発症しても、運動によって進行が抑えられたという報告もあります。無酸素運動で筋力アップ、有酸素運動で肥満予防をすることは、脳にもかなり良いのです。
アルツハイマーの患者さんの家族から、「予防することはできなかったのか」「自分はそうならないためにどうすればよいのか」と質問されることもありますよね。そのようなときの手助けになればと思います。
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