企業のストレスチェック導入というニュースに「フォローはいいのだろうか」と書いておりました所、ドイツの飛行機事故発生、事故に遭われた方のご冥福をお祈りします。
この文章を書いている時点で、事故原因は「副操縦士、診断書破棄、うつ病の疑い」になっています。別報道によりますと、この副操縦士、パイロット訓練中に似たような理由で、一時訓練停止、客室乗務員をしており、からかわれていたとのことです。
ここで問題を2つに分けましょう。飛行機の事故の確率は0ではありません。同じようにどんなパイロットが操縦してもパイロット自身の責任で事故が起きる可能性も0ではありません。今回の事故については「操縦士がコクピットから追い出された」のが原因の1つではありますが、飛行中、外から人がコクピットに入れないようにするのは、操縦の安全のためである、という理由もあります。事故の再発防止は、航空会社に今後しっかり考えてもらいましょう。どちらかというと「だから精神科通院歴のあるやつは」となるのが、今1番心配されることですね。
事故と言うのは、理由に関わらず、各種不可抗力が積み重なってしまった不幸な出来事です。決して、うつ病などの病気の延長に事故があるわけではありません。病状の悪化と、事故が起きることの間には大きな溝がある、ということは、精神疾患への誤解を招かないよう書き添えておきます。余談ですが、上のような理由で精神疾患の運転免許事情が無駄に厳しいようなのです。どちらかというと、高齢者の事故の方が圧倒的に多く、こちらは高齢者講習で済むという点が疑問なのですが。
さて、本題に戻ります。このブログでのキモは「病気、特に精神疾患の患者が職につくとき」の話です。普通に考えれば、150人の命を巻き込んで優秀なパイロットの地位を維持するくらいなら、別の仕事に就いてほしかったと思いますよね。しかし、この副操縦士さんはかなり若い時から飛行訓練を受け、パイロットとしてはかなり優秀な人だったようです。上に書いた客室乗務員時代の「からかい」が悪質な意味ではなく「おまえが、こんな仕事をするとはね~」だったとしましょう。それでも、彼にはかなり堪えたはずです。
うつ病の症状に、被害妄想や視野狭窄があります、この場合の視野は物の考え方ですね。パイロットに固執するよりも、他の仕事につくべきだ、とは、なかなか思えないものなのです。そのため、うつ病などの精神疾患の場合は、長い時間をかけて認知療法を行うのです。平たく言えば、どんなことでもポジティブに考えるように、ですが、これは普通の人でも難しいですね。
ストレスチェックで起きる最大の問題は、今回のように「どこで職に就く、外すの線引きをするか」ですが、これは先に書いたように、その仕事が持つリスクにより違います。また患者の立場に立ったとして、同じ病気でもどの程度の負担がかかるとまずいのか、という判断に完璧さを求めるのは無理でしょう。仕事のリスク管理と本人に対するリスク管理をなるべく「最大限」にしておく、ということくらいしか言えませんね。
ストレスチェックの問題の第2点は「職への固執」です。傍から見ればパイロットという仕事にそこまでこだわらなくてもいいと思うのですが、この人の場合、そうではなかったようですね。専門職の場合、特に「自分はやってきた、やれるんだ」という思いが強くなります。職を外されることは、本人の存在否定にもなってしまうんです。
病気リタイアを恐れるのは、今の地位を外れると、収入が減るという現実的な理由ばかりではなく、こちらの理由が大きいかもしれません。
病気=存在否定ではない、むしろ病を得て、出来ること、見えることがあるはずだ、という方向に持って行かなくてはいけません。ストレスチェックに引っかかったときに「落選」のような感覚になってはいけないのです。そうでなくても、引っかかる状況にある人は「落選恐怖」になっています。無理のある状態で勤務することより、ブランクを開けても、ベストの状態で勤務した方が、自分のためにも人のためにもなる、と思える環境を作らなくてはいけません。もちろん、仕事上の居場所を失くさず何らかの形でキープしておくのも、大事なことです。しかし、実際問題、病気になると実働時間が減り、給与が下がるということは起きるでしょう。
会社というのは、お金の利益を出す場所ですから、お金がものさしになってしまうのは、仕方がないことです。しかし、ストレスチェックを会社でフォローしようとすると「地位と給与を高いレベルで保持すること」が人として立派かどうかはまた別、ということを、他ならぬ会社で教えなくてはいけなくなるのです。とっても矛盾していますね。
実は矛盾はしていません。1人が大金をもらい、それ以外の人が薄給酷使されている会社を、世の中はブラック企業と呼びます。会社はチームプレーです、アクシデントのあった人に休んでもらうことは大事なことです。チームにおいては、人の不幸は自分の不幸なのです。「私の給与が高いのは君のおかげである」「君がしっかり休んでくれて、会社の名前が守れる」会社という場所で病気になるのは、会社の不幸でもあると思いましょう。全ての仕事は人のため、誰かのために休むことも重要なことなのではないでしょうか。
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