STAP細胞騒動から見る医療

stap昨年印象に残ったニュースを1つあげよ、と言われたら、おそらくSTAP細胞騒動はベスト3に入るのではないでしょうか。

小保方晴子氏とその周辺の人たち、というテーマについては週刊誌にお任せすることにして、医療という目線でこの騒動を考えたときにも、興味深いテーマがいくつか隠されているのです。

1つは幹細胞研究の発達、というより、もしかするとこのジャンルの研究は、もしかするとブームに近いものがあるのかもしれません。流行は遅れると意味がありませんし、お金にもなりません。そう考えると「早い者勝ち主義」の理系の世界で、このようなことが起こるのもあまり不思議ですね。

ここで、ちょっとブレイクして、そもそも「幹細胞とは?」から考えてみましょう。幹細胞は大きく分けて、ES細胞、iPS細胞などの万能細胞、と、成体幹細胞に分かれます。

成体幹細胞は臨床ではかなりおなじみです。この単語ではピンと来づらいですけど、代表例;造血幹細胞=骨髄内に存在、移植治療で血液系がん治療が行われていますね。

造血幹細胞は、いろんな血液成分の元になります、つまり血液限定の幹細胞です。
移植の話を持ち出すまでもなく、人の体には、いろんな成体幹細胞があって当然なのです。そうでなければ、例えばけがをして、止血のために血小板が消費された場合、何も応用が利かず生命の危機になってしまいます。

また近年ではこの「応用が利かない」とされてきた神経細胞~脳神経にも神経幹細胞が働くことが解ってきましたね。これにより、脳梗塞系のリハビリの方法も変化しつつあります。

このように、幹細胞というのは、人の体を語る上で欠かせないもの、しかし今までは成体幹細胞レベルの話だたのに、ついに万能細胞ES細胞が出来ます。
これは受精卵の一部を切り取ったもの、したがって現実に利用するには倫理的な問題がありましたが、これをクリアしたのがiPS細胞です。ご存知の通り、どこの細胞からでも、好きな細胞が出来てしまう技術です。

そして山中教授のノーベル賞のニュースから、そこまで日が立たないうちに「網膜色素シート」なるものが完成、昨年移植手術が実施されました。(余談ですがSTAP細胞と同じ理化学研究所の同じセンター医療病院です。)この話、あまり後追い報道が出てきませんね。

それはさておき、こんな高度な技術が、おそろしいスピードで臨床に持ち込まれてしまったのです。つまり、科学技術の進歩は「ニュース」ではなく「明日の仕事」になる可能性が大きいのです。また技術は進めば進むほど、少しの変化ではなく「大規模な変化」になっていきます。成体幹細胞から一気に万能幹細胞になっていったように、またインターネットがあっという間にスマホになったように。そしてこのスピードに、肝心の「人」はついていっているのでしょうか?

実は個人的に21世紀に入ってから感じる違和感は「産科の廃止」と「不妊治療施設の増加」なのです。かなりシュールな図式だと思うんですよね。後者は科学技術の進歩、前者は人間の思考回路から生まれたものです。

最近よく「尊厳死、安楽死」の話もニュースになりますね。また病気を「治さない」という考えも、ちょっとしたブームになっています。医療技術が発展すると、全く逆方向の話が出てきてしまうのです。これは、なかなか興味深い話だと思いませんか?

医療技術が人間の考えを追い越してしまっている、極端なことを言うと「治療する意思もないのに、勝手に治されている」ということになってしまうため「治さない」から「死ぬ」まで、本人が宣言しなければいけないということになっているのです。産科医療も、これに近い話で「不妊治療が進むのはいいと思うけど、現実に産科の現場での勤務は無理!」という声の表れですね。

今回のように騒動にでもならない限り、医療技術の方は止まりません。従ってやるべきことは「臨床現場にいるものが、現実を知る」ことです。

現実とは、現在の最先端医療技術でもあり、また病院に足を運ぶ患者さん、産科のハードな勤務に根をあげる現場の人たちでもあります。医療は、あくまで人の生活を豊かにするものですね。

最近は、日帰り手術も多くなり、高度医療技術は日々ものすごいスピードで進んでいる反面、仕事がハードすぎて回らない医療現場、また高度医療技術を受けることが本人の幸せにつながるのか、どうか解らない患者さんの存在と、多くの矛盾が同居しているのが現在の医療現場です。そういった現場の矛盾を感じながら、患者の声を聞くこと、それが出来るのは現場の看護師だと思うのです。

今でこそ、ごく普通の「体外受精」第1号の方は、まだ30代、昨年お母さんになりました。日本人初は83年生まれの方です。このレベルですら、2世代目は実験中とも言えるのです。

最後になりますが、STAP細胞騒動が残したテーマは、この「科学の不確かさ」にあるのです。科学というジャンルで何かを発見すること、とそれが安定して作れること、その後、臨床で応用できるようになることは、全く別のステージなのです。第2,3のステージの高さは、臨床での理不尽な出来事で体感出来るかもしれませんね。理屈ではリスクゼロに近い処置で、悲劇が起きてしまうことは珍しくはないはずです。

「日進月歩の医療技術を絶えず省みること、謙虚であること」

そして何より「目の前にいる患者さんが幸せに生きる人生」のために医療(技術)はあるのだということ、それを忘れないことが、今回の騒動の教訓だと思うのです。


応援クリックして下さると励みになります!
↓↓↓↓↓↓

看護師 ブログランキングへ

関連ブログ記事:理系研究と広報力

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

おすすめサービス一覧

常勤、非常勤、パート、派遣あらゆる看護師求人情報を無料で簡単条件検索し放題!!

お仕事をお探しの地域の最新求人情報を週2回配信する「ハローワークナース通信」
もちろん利用は無料です。

今、評判のよい看護師転職サイトってどこなの?⇒ 現役ナースがよく利用している看護師転職サイトをランキング

おすすめコーナー

ページ上部へ戻る
error: Content is protected !!