遺伝子操作と尊厳

08b1325f先日、中国で人の受精卵の遺伝子を編集できる「ゲノム編集」のニュースが話題になりました。

今までは「遺伝子組み換え食品」というのがあるように「災害に強い作物を作ろう!」と思った時に災害に強い遺伝子を探し出し、その遺伝子を追加するという形で遺伝子レベルの食物や医療分野の研究が進んできました。組み換えと言うより足りない所を補うという面が大きく、また必ずしも効果的な場所に「災害に強い遺伝子」がうまくはまる」訳でもないのです。的確な位置にはまらずエラーが出てしまうんですね。そのための弊害が起きることなど、不確かな部分が多いという理由で、遺伝子組み換え食品についての安全性の問題がずっと語られているのです。

これに対して今回の「ゲノム編集」というのは、要らない遺伝子を壊し、そこに好みの遺伝子を追加する技術、そして人でもこの技術が応用可能だと「思う」という話なのです。「編集」という言葉通り、運動神経がやや劣る遺伝子を壊し、そこに運動神経のよい遺伝子を組んで、運動が得意な子供が作れるようになるのです。つまり、子供や自分の性質を「お好みに応じて編集できます」ということなのですね。

この話は、まだ理論としてできたという程度ですので、安全性が全く分からず、倫理的な問題を一気に飛び越してしまった話なので、各国研究者は「ヒトへの応用への懸念」を示しており、今すぐ何かが起こるわけでもありません。もちろん大きなメリットとして、先天性疾患の患者の場合、病気の原因となる遺伝子を取り除き、必要なものを追加することで、劇的に病状が改善される可能性は大いにあります。筋ジストロフィーなどの患者さんにとっては、大きな希望です。その反面、この話は行き過ぎると「デザイナーズベビー」になってしまうのです。精子バンクで「イケメン、運動神経よし、IQ,リーダーシップ」などの条件を満たした人の遺伝子を持つ精子を選び、自分の好みのタイプの子供を作るという話がありますね。一部で非難されています。

しかし、考えて見てください。人は苦労や経験を元に自分の経験を活かし、自分だけの人生を作り上げていくことが理想だと多くの人は思っています。しかし、自分の子供となると「やはり顔がいい方がいい。頭もある程度の学校に入れる方が・・」となるのが、親心ですよね。そしてもしこの野望?がかなえられるという状況になったとき、人はどんな選択をするでしょう。

現在、出生前診断でダウン症の可能性が早目に解ることになり、その結果9割以上の妊婦さんが「疑いがあった場合、中絶を選択する」と言われています。そして、こういう経験をされた方には「邪魔になるからいらない」という判断を自分の子供に対してしてしまったのではないか・・と、ずっと悩み続けている人も少なからずいます。

人間は心身共に、全体のバランスで出来ています。そこを部分的に入れ替えると、頭はいいが、そのことで悩む人生を送る可能性も出てきます。いわゆる「優秀」と呼ばれる才能は、社会を生き抜く上で有利になることは確かですが、優秀な人より、「人たらし」的な人材が欲しいと思う会社も多くあるでしょう。そうなると、ゲノム編集技術を選んだ選択は正しかったのか、と悩むことになりますし、「じゃあ、人たらしになれるような遺伝子操作をしよう」ということになり、また同じように長所と短所が出てくるといういたちごっこになりかねません。そして、今までの遺伝子組み換えより確実であるような書き方をしましたが、ヒトに応用した場合、計算通りに行くとも限らないのです。

遺伝子操作の話題をしていると、遺伝子部分にしか目がいかなくなりますが、人の成長は環境によるところが非常に大きいのです。病人であっても、普通の人と同じことをしている人は多くおられますし、更に病気になったことで、それまで気づかなかったことが見えてきた、新しい道に進み、そこで自分が本当に納得できる人生の目標を見つけたという人も、少なくありません。

人は理不尽な目に遭うからこそ、成長しよう、乗り越えようという想いが出てくるものです。そしてこういう脳の仕組みは、解らないことがたくさんありますし、部分的に改善した結果バランスを崩し、寧ろ不幸になることもあります。またゲノム編集が現実化した場合、実際に治療として利用できるのは、おそらく一定以上のお金のある人ですよね。貧乏=バカ、金持ち=利口と言う構図が出来てしまい、格差社会がよりひどくなることも考えられます。

この研究に限らず「人が生きること」を考える前に、技術や理論がどんどん進んで言ってしまっているのが現代社会です。どういうことがあっても、ヒトや環境にパーフェクトはありません。どれだけ有能な人でも自然災害に遭い、すべてを失う可能性もあります。医療関係者は元より「相手の存在を肯定する」ことだけは、忘れないように、医療現場では特にそのことを主張してほしいと思うのです。誰の役にも立たない人はいません。「誰かがいる」そのことだけで幸福を感じることについて、今一度考えて見てもいいのでは、と思います。


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