生体肝移植と生と死

ope_2先日のNHKクローズアップ現代「生体肝移植の失敗問題」を、ながら見しておりました。てっきり、「多発する医療事故」に焦点を当てた話だと思っていたのですが、1番解説者の方が強弁されていたのが「そもそも健康な人にメスを入れるのはおかしい」ということです。

実際に出てきたデータとして、欧米では脳死移植の例は多いのですが、生体肝移植は例外中の例外、やむを得ずというケースで数えるほどしかないのです。理由は先に書いたとおり「健康な人にメスを入れてはいけない」という理由からです。

そもそも、日本は脳死移植=ドナー登録自体があやふやであり、脳死=死と認めていいのかどうか、という所で悩む感覚は大事にしてほしいものですが、おかげで生体移植=生きている者同士で「臓器を分け与えること」が、やや美談として語られすぎていますね。その裏にはリスクも失敗がある、というテーマだったようです。更にこの番組で取り上げられていたのは、生体移植が医療ツーリズム、言葉は悪いですが金儲けとして使われているということです。

よく韓国では美容整形が多く、韓国に行くと安く簡単という理由で渡航、整形する人がいますが、一般の日本人の感覚からすると、やや進んだ人というイメージを持たれますね。平たく言えば違和感です。しかし「誰かを助ける」生体移植となると、一気に美談になるのです。でも、この解説者の方が提言したように「健康な体にメスを入れる」という意味ではどちらも同じですね。むしろ美容整形の場合は、本人が本人のためにやっていること、リスクは全部自分である分、まだいいとも言えます。

全身麻酔の手術は、どうしてもリスクが大きくなります。また機械ではないのですから取って使えばいい、という理屈でもありません。肝臓の場合、一部を切ったところで問題はないとされていますが、体には個人差があります。医療上のミスをしなかったとしても、どんな後遺症が出てくるか解りません。少なくとも、傷が痛むということはあるでしょう。しかし、こういうこと、提供する側も医療をした側も「立派な行動」と言われてしまうのです。お国柄なのかもしれませんが「人のために身を切る」という行為が非常に尊いものとされ「それはどうなんだろう」とは、とても言いにくい雰囲気がありますよね。というより、そうしなかった人に対して「勇気がない」と言ってしまいそうな雰囲気もあります。でも生体移植による医療ツーリズムは人助けであると同時に、健康な人の臓器を利用したビジネスという言い方が出来なくもないのです。

韓国の整形や代理母ビジネスが盛んな国の報道がされると「どうもね~」という空気になりますが、健康な人の体を危険にさらす、という意味ではあまり変わらないのではないでしょうか。生体移植については「美徳」のイメージが大きいため、あまり日頃から違和感がありませんが、改めて言われてみると、外科医にしてみれば非常に違和感のある治療法ですよね。「人のため」はいいこと、が先行するあまり、臓器提供に関して違和感を持たなくなっている、この感覚を、一度考えて見ていいと思います。

もし、この方法を回避するとすれば、人工臓器を作る(iPS細胞方式を含む)か、脳死を含む死亡提供者からの臓器提供を受けるの2つが主な選択だと思います。しかし、不思議なことに、脳死などによる死亡者の臓器移植提供者の方が、時々社会問題になったりしますよね。子供の場合は特にそうです。もっとも子供の場合は脳死になっても、回復する可能性が大人より高い、という正当な理由がありますが。

なぜ、ここに違和感を覚えるのかというと「見知らぬ他人から本人の許可なく」という点にあるのでしょうね。生体移植は殆どの場合、親族による提供です。つまり「家族は助け合う姿が美しい」という発想が強い国なのです。これに対して欧米は、個人主義が強く家族の犠牲になる行動を、取りにくくするように制限しているようにも思えます。日本の場合は医療だけでなく、色々なことについて血縁主義と言われることに通じますね。しかし、この家族至上主義もかなり限界にきている気がします。そうすると生体移植の臓器提供者は善意の第3者になる可能性が高まりますね。

ここで、根本的な問題に戻りますが、人の体というのは分け合うものなのでしょうか。骨髄移植や輸血などもこの範囲に入れると更にややこしくなりますが、生体移植の場合は「減っても大丈夫なのであげる」という発想ですよね。1番問題なのは、医療従事者に取ってこの感覚が当たり前になってしまっていること「当然の選択肢、更には人助け」だと思っていることです。

医療の基準は、基本的に病院の提示する方法によって作られていきます。つまり日本の場合「臓器はみんなで分け合おう」という空気を医療機関があまり疑っていないのです。というのも、この選択のハードルを高くすると、脳死移植しか方法が無くなってしまう=面倒なことになるからです。こういうニュースを機に、生きていくために何をしてもいいのか、死とは何なのか、脳死とは・・こういう大きなことを考えてもいいように思います。


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