一般社会への復帰

046先日のニュースで「ハンセン病療養所で看護助手が入居者の頭を叩く」というのがありました。やってはいけないことですが、介護職の立場で激務を想像すると100%非難しにくいものがあります。

ところで、隔離政策の必要がないハンセン病療養所は、今何のためにあるのだろう?と思ったら、ハンセン病は神経障害が残ることがあるため、リハビリが必要なのですね。また、患者さんが高齢化しているため、事実上介護施設に近い部分もあるようです。とはいえ、新規でいきなり入ってくる人はほぼおらず、最初に入居した人の社会ともいえる場所になっているようですね。こういう場所での看護師となると、一般病棟勤務とはかなり勝手が違います。

そもそもハンセン病は隔離の必要がないどころか、実は病名が違うのでは?という人まで差別的に家や地域から追い出されてしまった過去を持つ病気、元々、治療をして社会復帰をする、という目的での入所ではないんですね。

病院というのは、そもそもあまり歓迎される施設でもないですが、ハンセン病療養所は「差別エリア」として設けられたと言っても過言ではないでしょう。そのため「入所」という事実が、精神疾患を作ってしまったケースも多いようですね。

話が脱線しますが、人は非日常的な状況に置かれると、1か月程度である程度適応できるようです。精神科の閉鎖病棟の長期入院問題はここにあるのです。時節柄、戦争なども近いものがありますね。平和な状況の中、平常心で話を聞くと「なぜ?」と疑問に思う状況しかないのが戦争ですが、実際に「戦地」という非日常に置かれると、そこに適応せざるを得なくなります。そして元の生活に戻るのには、さらなる適応力が必要とされます。先の大戦で、この復帰プロセスがうまくいかずに命を落とした人も多いようですね。もっと知られてもいい話だと思うのですが。

ハンセン病療養施設もこれと同じであるうえ、最初に「人として失格」という低評価を受けてしまうという、かなりひどい話ではあります。この特殊な状況が精神疾患を呼ぶ場合もあり、またハンセン病に似た症状が出る別の病の人は、その治療を受けずじまいになってしまっていることもあります。元から誤診、というひどいケースもあるのです。

こういった状況でずっと療養所の中で生活していく、というのは、現代の日本ではなかなか想像しにくいことですね。ですから、価値観自体、外の社会と別の状況である、と前提しておく方がいいかもしれません。実際、退院可能になっても、心身共に一般社会に戻ることが無理になり、療養所生活で一生を終えるということも多いようです。

救いがあるとすれば、ハンセン病=感染症という間違った認識が無くなってからは、多少共同体としての楽しみなどが成立している所があることですね。土地により、療養所内の文化が異なるそうです。こういう話を聞くと少し安心しますね。

生きるための選択の自由を失う、という、とんでもない状況に置かれていても、そこで生き方を工夫する余地があるというのは、せめてもの救いに思えます。ですから、療養所に勤務する看護師の場合は、都会から田舎に行くような感覚でいなければいけないかもしれません。療養所で長く暮らしてきた人の文化ややり方というものがある中に入っていくのですから。そして、その状況が外の自由に慣れた人間からすると、なじみにくい部分もあるのかもしれません。こればかりは、当事者にならないと感覚としてわかりにくいですが。

またハンセン病療養所で特筆すべきは「種の断絶」ですね。結婚や恋愛は自由な所もあるようですが、子孫を残す選択だけは出来なかったようです。日常で不妊を抱えたご夫婦は珍しくありませんが、身内の赤ちゃんや近所の子供に接する機会はありますね。当事者にしてみれば哀しさや悔しさが増すだけということもありますが、療養所の場合は、その比較すら出来ません。集団として、そういう選択肢を持てないからです。これは普通の生活を送る、一般的な日本人には理解できない感覚ですね。そのような人生を経て、高齢化し、高齢ならではの病を抱えているのがハンセン病療養所の入所者たちなのです。

ハンセン病の隔離政策が取られていた頃、先に書いたように、軍隊でのトラウマや肉体的な傷を負って暮らしている人もいます。またそういった状態で、身内を療養所に送らざるを得ない生活をしていた人もいるでしょう。この時代は、ハンセン病に限らず精神疾患を筆頭に、病気というだけで心無い言葉を投げかけられていた時代でもあります。病院のハードルが低いことがいいのか悪いのか、特に精神科については難しい部分もありますが、病人が一般社会と近い距離にいることが出来るようになった点は評価してよいでしょう。

先に書いたように、隔離された場所から一般の社会に戻るには大変な努力が要ります。終戦記念日を前に、こんなことを考えて見るのも時には必要ではないかと思うのです。ちょっとした病気でも、普通の生活に戻るのにはとまどいがあったりしますよね。それを理解できるのが臨床の看護師、いつかは一般社会に戻れることは困難であってもそれ以上の希望であることが、今闘病中の方に伝わるといいですね。


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