がん患者さんと生殖~日本初の卵巣バンクとは~

4月27日、日本初の「卵巣バンク」が設立されると発表されました。宮城県仙台市にある医療法人社団レディースクリニック京野は日本産科婦人科学会からの承認を経て、5月にこの「卵巣バンク」を設立させることを目指しているといいます。

卵巣バンクって何?メリットは?

卵巣バンクの目的は、がんの治療など卵巣の機能が損なわれる可能性がある場合、治療前に卵巣を取り出して保存することで、妊娠の可能性を残すということです。対象となる疾患は、乳がん、子宮頚がん、子宮体がん、卵巣がん、血液がんなど。一部、卵巣への侵襲が高い白血病などの疾患は適用外とされますが、ほとんどが女性疾患に適用されます。
特に乳がんの場合、抗がん剤治療によって閉経が早まるほか、長期的にホルモン療法を続けなければいけないので、妊娠や出産が難しくなるケースも少なくありません。このような患者さんにとって、病気のためにこどもを作れないのは本当につらいことですよね。しかし、この卵巣バンクは、このような疾患を抱えた人が治療を終えた後、凍結しておいた卵巣組織によってこどもを作る可能性を残せるというわけです。

卵子凍結、受精卵凍結との違い

このように将来の妊孕性を残す方法として、今行われているのは卵子凍結、受精卵凍結です。

卵子凍結は、受精していない卵子を凍結して保存しておく方法で、13歳以上で受けられます。
内服や注射で排卵を誘発し、卵子を取り出しますが、日帰りで採卵できる施設も多いです。
費用は薬剤費、手術費などに加え、保存代もかかります。
一方の受精卵凍結は、体外受精や顕微授精で授精・発育させた受精卵を凍結させます。

卵巣バンクは、これらの卵子凍結や受精卵凍結と違い女性の体から卵子だけを採るのではなく、卵巣組織を凍結させます。そうすることで、たくさんの卵胞を保存することができるので、卵子凍結や受精卵凍結と違い「全部だめだったから妊娠できない」ということにはならないのです。

卵巣バンク、気になる海外のデータ

日本では初となる卵巣バンクですが、海外ではすでに行われています。

海外のデータ
・デンマークが調査した結果について、卵巣凍結を行った0~40歳までの年齢分布は、25~30歳が一番多いと発表しています(2010年)。
・海外の4施設において卵巣バンクによる移植あたりの妊娠率は25%と発表しています(2015年)。
・マルクス・モンタークCEOは、74人で卵巣凍結再移植を95回行い、21人が妊娠、そのうちの16人が出産したと発表しています。ちなみに、4人が流産、1人は妊娠継続中との報告でした。

これらの海外のデータから、卵巣バンクを利用した妊娠率は25~28.4%だということがわかります。また、海外ではデータを取るほど行われているということもわかりますよね。

がん患者と生殖

卵巣バンクを利用して3割に満たない妊娠率だったとしても、可能性が残されるならチャレンジしたいという方は全国にたくさんいらっしゃるでしょう。特にこどもを希望している若い女性にとって、卵巣バンクは希望の光になるはずです。治療を受けて、生きて、こどもを産みたいという目標にもなりえます。がんの治療は決してやさしいものではありません。このような希望は、大きな支えとなるのではないかと筆者は思います。

一方、やはり費用の問題は切っても切り離せません。ただでさえ、治療にお金がかかりますから患者さんの負担のことを思うと、みんながみんなできるものではないでしょう。滋賀県では、がん患者さんが卵子凍結や精子凍結を行う場合に助成金を出していますが、残念ながらどこでも行っているものではありません。ここでも貧富による格差は生じてしまいます。
また、世界で行われていることでも、日本においてははじめての試みなので安全性の問題も注目されますし、地震などの災害で保存していた卵巣組織がだめになってしまうこともあります。今回の報道では、卵巣組織を1拠点ではなく3拠点で連携をとりながら保存していく予定だといわれています。つい最近、九州での大地震があったので、そういった自然災害など不測の事態への配慮はより厳重になっているのかもしれませんね。

いずれにしても、新しい試みには筆者は賛成です。日本は保守的なところがありますから、認可されない薬や治療も山ほどあります。子宮頸がんワクチンのような事態は避けたいですが、認可されない薬や治療で助かる命もあるでしょう。病院で働いていると治療法がないという患者さんの苦悩をみる機会もありますよね。
5月には卵巣バンクが設立予定ですので、その後日本における卵巣バンクの成果に注目です。


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