「絆」と「自己責任」

icu2また今年も東日本大震災の日が近づいてきました。
5年前のこの時期、やたら「絆」が強調されましたが、その裏にあったものは「自己責任」という言葉ではないかと思います。もともと「自己責任」という不思議な言葉が、どこから出てきたのかと思ったのですが、昔「連帯責任」という言葉がよく使われていたせいですね。

連帯責任とは、文字通りチームで何かをやってミスなり、うまくいかないことが起きたときに、当事者全員が責任を持つという考え方です。しかし、これは1つ間違えると「私ではなく!Aさんの書類がおかしかった、彼女がしっかりしていればよかったと思う」というふうに、「自分のせいじゃない、あの人だってサボっていた!」という、責任の所在のたらい回しが起きてしまうのです。そうすると、たらい回しに力が入ってしまい、肝心の問題が解決しなくなるため、様々なカテゴリーを作り、それぞれに責任を持った形にする、つまり責任の所在をはっきりするようにしようとした結果「自己責任」という言葉が現れたように思います。

この言葉がその効果を発揮したのか?というと、むしろ逆に行ってしまったように思うのです。つまり何かあった時に「Aさんの所でミスがあった」ということがはっきりすると、そこを責めることを考えるか「自分には関係がない!よかった」となってしまうかの、どちらかなのです。そして多くの場所で「自分には関係がない」という考えが広まってしまったように思うのです。「自分には関係がない」と思って生きるということは、何かのチームの一員であっても、その全容を把握しようとは思わなくなることです。自分に関係ないことに巻き込まれるのは、面倒ですから。そうすると、事実上、チームではなくなる上に、横のつながりが、どんどんなくなってしまうのです。その結果「無縁社会」という言葉が出てきました。そんな風潮の中で起きたのが、東日本大震災です。ですから「絆」という言葉がことのほか、大きく取り上げられたのでしょう。

しかし、震災直後に起きたことの1つが「自粛」です。ちょっと想像してほしいのですが、震災というのは、人ならぬ土地が大けがをした状態ですよね?そこで、どんちゃん騒ぎをするのは、人としてどうかと思う代わりに、ずっとベッドの横で「お通夜のような顔」をされていたら、どんな気がしますか?申し訳ないか、よけい気が沈むかになりますよね。つまり、この自粛というのは、あまり当の被災者の方には役に立っていないのではという気がするのです。これも、また自己責任から来ることの1つかもしれません。「みなと同じことをしていれば、責められたりはしない」という考えです。ですから、絆=みんなで一緒にという言葉が多く出てきたのでしょう。実は「絆」という言葉は糸偏がついていることから解るように、「人を拘束する」というのが元々の意味なのです。

さて、ここで医療の現場を考えてみましょう。誰かの処置がまずかったかもしれないことのために、患者さんが急変したとしましょう。まずすることは、患者さんへの対応ですね。そして、もしその患者さんが孤独な身の上で、治療自体もういいや、という気になったとしましょう。それを踏まえたうえで「この人に対してどうすればいいのか」を、考えることが大事です。
「誰かの処置がまずかったかも」は、その後の課題として話し合いで取り上げればいいはず、そしてそのミス自体は特定のBさんのせいだったかもしれませんが、Bさんがなぜそのミスをしたのか、今後同じようなことがまた現場で起きるのでは?どうすれば、防止できるのか?またBさんのミスはミスになる前に、誰かがバックアップで来たのではないか・・そういった話が次の治療への大きな経験という蓄積になっていくわけです。

自己責任というのが不思議な言葉だと思うのは、人は基本的に自分の生き方に責任を持つのが当然です。つまり当たり前のことなのです。でもチームや組織として仕事していれば、必ずミスや連携トラブル(人間同士の軋轢を含む)が出てきます。仮にAIが治療できるようになっても「そこに納得できない」という意見も出てくるかもしれず、AI派とアンチAI派が出てくるかもしれません。AIに「自己責任」を取ってもらうようになるかもしれません。しかし、先に書いたように、自己責任を基本にした「チームとしての責任=連帯責任」という意識を持たない限り、肝心の患者の治療や今後というテーマは置いていかれることになります。

そもそも医療というのは1人の責任が、かなり大きい場所です。そして仕事内容に流動性があります。こういった場所で必要なことは「自分が居る場所や、関わったことは自分にも何らかの責任がある」という心得を持つことです。その心得があるからこそ、多少のエラーをカバーして、迅速に次の対応をすることが出来るのです。

連帯責任=自己責任の回避ではありません。社会で生きている限り、自分が働く場所や生活する場所、いろいろな所に義務という責任や権利が出てきます。看護師に必要なのは「絆」ではなく、チームとして職責を全うすること、人の失敗は自分にも関係があると思うこと、その結果、絆と呼ばれるものが出てくるかもしれませんね。


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